今回も引き続き「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」について取り上げます。
当該ガイドラインは、令和元年と令和2年の建設業法改正を踏まえ、令和2年10月1日より改定内容が適用されています。
前回に引き続き、「元請業者」の役割と責任を見ていきます。
1.施工体制台帳を作成しない工事における取扱い
施工体制台帳の作成が義務付けられていない工事においても、国土交通省は施工体制台帳の作成等を推奨しています。 ※「施工体制台帳の作成等について」(平成7年6月20日建設省経建発第147号)より
施工体制台帳を作成することにより、下請業者の社会保険加入状況及び各作業員の保険加入状況についても把握することができ、未加入であれば指導を行うことができます。
2.建設工事や施工現場等における周知啓発
元請業者は下請業者や建設労働者に対し、社会保険の加入に関する周知啓発を図るために、ポスターの掲示やパンフレット等資料の配布や情報提供等、継続して取り組むようにします。
3.法定福利費の適正な確保
社会保険の保険料は、建設業者が義務的に負担しなければならない法定福利費であって、建設業法第19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるものです。このため、見積時から法定福利費を必要経費として適正に確保する必要があります。(立入検査等において、見積書に法定福利費を計上していないことが発覚すると指導が行われることがあります。)
加えて、建設業法第20条第1項において、建設業者は建設工事の請負契約を締結するに際し、経費の内訳を明らかにして建設工事の見積りを行うよう努めなければならないと規定されています。このため、法定福利費相当額の内訳を明示した見積書を提出するよう下請業者に働きかけるようにします。
社会保険の保険料は建設業者が義務的に負担しなければならない経費です。「通常必要と認められる原価」に含まれるものであることを踏まえ、下請業者が自ら負担しなければならない法定福利費を適正に見積ることができるよう、見積条件を提示する際には、適正な法定福利費の内訳を明示した見積書を提出するよう明示しなければなりません。その際、社会保険の加入に必要な法定福利費については、請負金額に適切に反映することも必要となるのでご注意ください。
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行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。高度な法的知識、行政との綿密な調整が求められる一般的に難易度の高いと言われる許認可申請の対応を得意としている。建設業者からの信頼も厚く、建設業者の顧問や、建設業者の社内研修も多数対応している。