今回取り上げる「通達」は、専任が求められる配置技術者に関するものです。
1.「専任」が必要なケース
建設業法では、建設業者は工事を施工するときには主任技術者(場合によっては監理技術者)を置かなければならないと定められています。
さらに、建設業法及び建設業法施行令において、以下のとおり現場に配置された技術者は「専任」でなければならないケースが規定されています。
建設業法第26条
3 公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。建設業法施行令第27条
法第二十六条第三項の政令で定める重要な建設工事は、次の各号のいずれかに該当する建設工事で工事一件の請負代金の額が三千五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、七千万円)以上のものとする。
一 国又は地方公共団体が注文者である施設又は工作物に関する建設工事
二 第十五条第一号及び第三号に掲げる施設又は工作物に関する建設工事
三 次に掲げる施設又は工作物に関する建設工事
イ 石油パイプライン事業法(昭和四十七年法律第百五号)第五条第二項第二号に規定する事業用施設
ロ 電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第五号に規定する電気通信事業者(同法第九条第一号に規定する電気通信回線設備を設置するものに限る。)が同条第四号に規定する電気通信事業の用に供する施設
ハ 放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二十三号に規定する基幹放送事業者又は同条第二十四号に規定する基幹放送局提供事業者が同条第一号に規定する放送の用に供する施設(鉄骨造又は鉄筋コンクリート造の塔その他これに類する施設に限る。)
ニ 学校
ホ 図書館、美術館、博物館又は展示場
ヘ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第一項に規定する社会福祉事業の用に供する施設
ト 病院又は診療所
チ 火葬場、と畜場又は廃棄物処理施設
リ 熱供給事業法(昭和四十七年法律第八十八号)第二条第四項に規定する熱供給施設
ヌ 集会場又は公会堂
ル 市場又は百貨店
ヲ 事務所
ワ ホテル又は旅館
カ 共同住宅、寄宿舎又は下宿
ヨ 公衆浴場
タ 興行場又はダンスホール
レ 神社、寺院又は教会
ソ 工場、ドック又は倉庫
ツ 展望塔
つまり、公共工事に限定しているわけではないという事です。さらに、対象工事は個人住宅や長屋を除くほとんどの工事となります。
2.「専任」とは
専任とは、他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事することを意味するものです。「専任=常駐」と間違えて認識している方が多いので注意してください。
※ここで言う常駐は、現場施工の稼働中は特別の理由がある場合を除いて常時継続的に現場に滞在していることを意味しています。
専任とは、必ずしも工事現場への常駐を求めているわけではありません。技術者の継続的な技術研鑽の重要性や建設業の働き方改革を推進している現在では、技術研鑽のための研修、講習、試験等への参加、休暇の取得、その他の合理的な理由で監理技術者等が短期間工事現場を離れることについては、問題無いとしています。ただし、そのような場合には、適切な施工ができる体制を確保する必要があります。例えば、必要な資格を有する代理の技術者を配置する、連絡を取りうる体制及び必要に応じて現場に戻りうる体制を確保する等を講じていただく必要があります。
以上のような体制を取った場合であっても、当然、適切な施工ができる体制の確保は必然であり、監理技術者等が建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる者であることに変わりはありません。つまり監理技術者等の役割は変わらないことに注意してください。
3.適正な配置とは
「適正な施工を確保するため」と、頑なに監理技術者等を現場に拘束するような体制は必要ありません。代理できる者がいれば、研修参加や休暇取得のため現場を離れることに問題はありません。また、建設業界でもワーク・ライフ・バランスを推進する動きや女性の活躍を望む動きがあります。そのような動きを受けて、1日のうち短時間であれば現場を離れることができるような体制を確保する等、監理技術者等の適正な配置に取り組んでください。


行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。高度な法的知識、行政との綿密な調整が求められる一般的に難易度の高いと言われる許認可申請の対応を得意としている。建設業者からの信頼も厚く、建設業者の顧問や、建設業者の社内研修も多数対応している。