令和2年7月、中央建設業審議会において作成された「工期に関する基準」を、数回に分けて詳しく見ていきます。
5.契約方式
前回に引き続き、今回も工期を適正に設定するために考慮すべき事項を見ていきます。5つ目の事項は、契約方式です。
工事だけでなく設計から工事を一括して(工事前から)受発注する場合もあれば、工事だけを受発注している場合もあります。工事だけの契約であれば、施工のことだけ考えて工期設定をすればいいのですが、設計業務など工事の前に行う作業も含めて工期を設定する必要があります。工期となると工事だけの日程を考えてしまいますが、工事に繋がる業務を含め適正な工期設定が必要です。
他にも、複数の業者へ発注する分離発注を行う場合には、いくつもの業者が絡みます。そのため1つの作業遅れが、他の業者に大きな影響を及ぼします。影響は、後工程を行う業者にしわ寄せが行くということです。あとの工程を行う業者の工期がどんどん短くなってしまうようなことは避けなければならないので、分離発注の際には、余裕のある工期設定を行うことが必要です。
6.関係者との調整
適正な工期の設定をするためには、電力事業者など「関係者との調整を完了させる時間」を工期に含めるよう設定しなければいけません。
7.行政への申請
建設工事を行うには、道路使用許可申請など行政に対して様々な申請が必要になることが多々あります。申請を行うには事前に準備が必要になり、さらに許可等が出るまでの時間が必要になります。そうすると、申請等に要する時間も工期設定の際には考慮しなければなりません。
8.労働・安全衛生
労働安全衛生法等、建設工事現場では建設業法以外にも遵守すべき法律があります。労働者の安全を確保するためには、労働安全衛生法の遵守が必要で、また安全に工事が進められるような工期設定が必要です。
9.工期変更
契約時に十分考慮された工期が設定されているはずですが、追加工事などで工期の延長が必要になる場合があります。そのような場合には、当初の工期で無理やり終わらせようとするのではなく、工期延長することを受発注者で協議し合意することが必要です。そして、変更契約の内容は、他の業者へも関係する場合があるので、他の業者間の契約において変更内容が反映させるようにする必要があります。
10.その他
前回と今回の2回に分けてみてきた工期設定の際に考慮すべき事項、代表的なものが以上の9個になりますが、他にも考慮すべき事項はあります。しかし結局のところ、工事現場の環境や特性など要因は様々なため、工期に影響を及ぼしそうな事項についてはいずれも十分考慮するということが必要だと考えます。
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行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。高度な法的知識、行政との綿密な調整が求められる一般的に難易度の高いと言われる許認可申請の対応を得意としている。建設業者からの信頼も厚く、建設業者の顧問や、建設業者の社内研修も多数対応している。