令和2年10月の建設業法の改正に伴い「建設業法令遵守ガイドライン」も改訂されました。改訂された部分を中心に、建設業法令遵守のために注意すべき事項を見ていきます。
Case1.元請負人が、発注者からの早期の引渡しの求めに応じるため、下請負人に対して、一方的に当該下請工事を施工するために通常よりもかなり短い期間を示し、当該期間を工期とする下請契約を締結した。
Case2.工事全体の一時中止、前工程の遅れ、元請負人が工事数量の追加を指示したなど、下請負人の責めに帰さない理由により、当初の下請契約において定めた工期を変更する際、当該変更後の下請工事を施工するために、通常よりもかなり短い期間を工期とする下請契約を締結した。
Case1.、Case2.いずれの場合も、建設業法第19条の5に違反するおそれがあります。同様のケースが必ずしも違反に該当するわけではなく、総合的に判断されるようです。
著しく短い工期の禁止
第十九条の五 注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。
建設業法第19条の5は、令和2年10月1日の建設業法改正によって新設された規定です。建設業界では就業者の長時間労働が問題となっており、この長時間労働を是正しなければ建設業界における働き方改革が促進しません。建設業界は現在、時間外労働に関する限度基準告示の適用除外とされていますが、2024年4月1日からは時間外労働に対し罰則付き上限規制の一般則が適用されます。
建設業界における働き方改革を促進するためとして、建設業法第19条の5は新設されました。著しく短い工期設定を禁止とし、適正な工期設定を義務付けることで、無理のない働き方ができるようになり長時間労働の是正へと繋がります。
では、著しく短い工期設定とならないように注意すべき点は何かを見ておきます。
【注意点1】「工期に関する基準」等との照らし合わせ
建設業法第19条の5「通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間」とは、単なる数量的な時間・日数を指しているわけではありません。また、建設工事は様々なため、「建築工事なら1年の工期とする」など業種ごとに一律の工期設定をすることもできません。
比較するものは、令和2年7月に中央建設業審議会にて作成された「工期に関する基準」です。この基準に照らし合わせ、契約ごと個別に判断されることになります。
※「工期に関する基準」の詳細は2020年10月6日~のブログをご確認ください。
【注意点2】変更契約にも適用される
建設業法第19条の5の規定の適用範囲は、当初契約の際だけに限られません。当然のこととして、契約締結後の変更契約や追加契約の際にも適用されます。建設工事標準下請契約約款第17条には「(著しく短い工期の禁止)元請負人は、工期の変更をするときは、変更後の工期を建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間としてはならない。」と明記されています。これは、工期の変更が生じた場合に元請・下請間で紛争となることが無いように、当初契約の段階でこの内容を明記しておくことが重要です。
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行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。