令和2年10月の建設業法の改正に伴い「建設業法令遵守ガイドライン」も改訂されました。改訂された部分を中心に、建設業法令遵守のために注意すべき事項を見ていきます。
Case1.元請負人の施工管理が不十分であったなど、下請負人の責めに帰すべき理由が無いにもかかわらず下請工事の工期が不足し、完成期日に間に合わないおそれがあった場合において、元請負人が下請負人との協議を行うことなく、他の下請負人と下請契約を締結し、又は元請負人自ら労働者を手配し、その費用を一方的に下請負人に負担させた。
Case2.元請負人の都合により、下請工事が一時中断され、工期を延長した場合において、その間も元請負人の指示により下請負人が重機等を現場に待機させ、又は技術者等を確保していたにもかかわらず、これらに伴って発生した増加費用を一方的にした請負人に負担させた。
Case3.元請負人の都合により、元請負人が発注者と締結した工期をそのまま下請負人との契約工期にも適用させ、これに伴って発生した増加費用を一方的に下請負人に負担させた。
Case1.~Case.3の場合には、建設業法第19条の3に違反するおそれがあります。ほかにも建設業法第28条第1項第2号に該当するおそれもあります。
また、Case1.及びCase2.の場合には、建設業法第19条第2項に違反するおそれもあります。建設業法第19条第2項に関してはこちらのブログをご確認ください。
【建設業法令遵守ガイドライン】工期変更に伴う変更契約 2021年1月12日ブログ
不当に低い請負代金の禁止
第十九条の三 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。
建設業法第19条の3は下請負人を保護するために、不当に低い請負代金の額とする請負契約を禁止しています。上記のCaseの場合、費用が増加する原因が下請負人にはありません。
元請負人が強い立場を利用して下請負人に押し付けるような行為を禁止するために、この規定が設けられています。
では、このようなCaseで費用が増加した場合には、誰がその費用を負担すべきなのでしょうか。この場合には、元請負人が追加発生した費用を負担するべきであるとしています。元請負人は工事全体の施工管理を担っています。元請負人は、追加費用が発生しないように管理すれば良いためです。ただし、天災等のやむを得ない事情がある場合は、発注者を含め工事関係者全員で費用の点を含め調整が必要になります。
指示及び営業の停止
第二十八条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定(第十九条の三、第十九条の四、第二十四条の三第一項、第二十四条の四、第二十四条の五並びに第二十四条の六第三項及び第四項を除き、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成十二年法律第百二十七号。以下「入札契約適正化法」という。)第十五条第一項の規定により読み替えて適用される第二十四条の八第一項、第二項及び第四項を含む。第四項において同じ。)、入札契約適正化法第十五条第二項若しくは第三項の規定若しくは特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成十九年法律第六十六号。以下この条において「履行確保法」という。)第三条第六項、第四条第一項、第七条第二項、第八条第一項若しくは第二項若しくは第十条の規定に違反した場合においては、当該建設業者に対して、必要な指示をすることができる。特定建設業者が第四十一条第二項又は第三項の規定による勧告に従わない場合において必要があると認めるときも、同様とする。
一 建設業者が建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき。
二 建設業者が請負契約に関し不誠実な行為をしたとき。
(以下、省略)
上記のCaseでもう1点注意すべきことがあります。建設業法第19条の3の規定に違反しないとされた場合でも、建設業法第28条第1項第2号の「不誠実な行為」に該当すると判断されることがあります。元請負人が下請負人の利益を不当に害していると判断されると、場合によっては「不誠実な行為」とされ、指示処分に該当するおそれがあります。
増加費用が発生した際には、原因が何であるかを明らかにし、誰が負担するべきなのか誠実に判断することが必要です。
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行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。