令和2年10月の建設業法の改正に伴い「建設業法令遵守ガイドライン」も改訂されました。改訂された部分を中心に、建設業法令遵守のために注意すべき事項を見ていきます。
Case1.下請契約の締結後に、元請負人が下請負人に対して、下請工事に使用する資材又は機械器具等を指定、あるいはその搬入先を指定した結果、下請負人は予定していた購入価格より高い価格で資材等を購入することとなった。
Case2.下請契約の締結後、元請負人が指定した資材等を購入させたことにより、下請負人がすでに購入していた資材等を返却せざるを得なくなり金銭面及び信用面における損害を受け、その結果、従来から継続的取引関係にあった販売店との取引関係が悪化した。
いずれの場合も、建設業法第19条の4に違反するおそれがあります。
不当な使用資材等の購入強制の禁止
第十九条の四 注文者は、請負契約の締結後、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはならない。
「不当な使用資材等の購入強制」とは?
「不当な使用資材等の購入強制」とは、請負契約締結後に、注文者が請負人に対して、資材等の指定をし、購入を強制することで請負人の利害を害することをいいます。
元請下請間の請負契約は、元請負人が注文者となり、下請負人が請負人となります。
規制の対象は?
建設業法第19条の4で不当な使用資材等の購入強制は禁止と規定していますが、これは下請契約の『締結後』の行為に限られています。
というのも、下請契約締結前の見積りの段階であれば適正な見積ができるためです。契約締結前であれば、資材を指定されてもその資材の費用を踏まえた上で見積りをすることができ、下請業者の利益を害することはありません。そのため、禁止されているのは請負契約の『締結後』の行為だけとなります。
元請負人は優越な地位にある?
元請負人は、下請負人を指名する権利があり選ぶことができる立場にあります。つまり、元請負人は、下請負人に対し取引上優越な地位にあるといえます。2021年1月26日のブログ『不当に低い請負代金』も併せてご確認ください。
資材等の指定とは?購入先の指定とは?
例えば、使用する資材について、元請負人から下請負人に「○○会社の▲□型を使用して工事を行うように」と具体的に会社名や商品名を指定することをいいます。商品名の指定は無くても、××会社から購入するようにと、販売会社を指定することも含みます。
請負人の利益を害するとは?
資材を指定し強制購入をさせられた結果、下請負人は予定の購入価格より高くなるケースがあります。もしくは、購入の予定をしていた資材等をキャンセルすることとなったケース等も考えられます。このように、金銭面での損害や信用面での損害を下請負人が受けるときには、下請負人の利益を害されたことになります。
「購入先指定や資材指定」のすべてが悪ではない!
先にも述べた通り、規制対象は「契約締結後」の行為だけです。そのため、資材等の指定を行いたい場合には、元請負人は見積条件を提示する際にこれらの項目を提示すれば良いということです。
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行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。高度な法的知識、行政との綿密な調整が求められる一般的に難易度の高いと言われる許認可申請の対応を得意としている。建設業者からの信頼も厚く、建設業者の顧問や、建設業者の社内研修も多数対応している。