令和2年10月の建設業法の改正に伴い「建設業法令遵守ガイドライン」も改訂されました。改訂された部分を中心に、建設業法令遵守のために注意すべき事項を見ていきます。
1.独占禁止法との関係について
建設業法において、建設業者が以下の規定に違反している事実がある場合、当然のこととして建設業法違反となります。さらに、その事実が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。いわゆる「独占禁止法」です。)第19条の規定に違反していると認められると、公正取引委員会に対して措置請求を行うことができます。建設業法第19条の3 不当に低い請負代金の禁止
建設業法第19条の4 不当な使用資材等の購入強制の禁止
建設業法第24条の3 下請代金の支払(第1項)
建設業法第24条の4 検査及び引渡し
建設業法第24条の6 特定建設業者の下請代金の支払期日等(第3項、第4項)
2.社会保険・労働保険等について
社会保険や労働保険は労働者が安全に働くために必要な制度であり、これらの保険は強制加入となっています。2020年10月の改正建設業法において、社会保険の加入が建設業許可の要件になったことも周知の事実だと思います。
これらの保険料は、建設業者が負担する「法定福利費」であり、建設業法第19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるものです。見積りを提示する際には、法定福利費も含めて見積金額を出すようにします。
3.労働災害防止対策について
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)では、建設工事現場における労働安全衛生についても規定しています。労働安全衛生法においては、元請業者が下請業者に対して労働災害防止策を講じなければなりません。
労働災害防止にあたり必要な経費については、元請業者も下請業者もそれぞれ負担が必要です。「通常必要と認められる原価」に含まれるものになります。見積りの段階で、この費用も含めて見積りを提示するようにします。
この経費を、例えば元請業者が下請業者に対して、一方的に負担をさせたり、もしくは下請業者が提示した費用金額を一方的に削減する等を行って請負契約を締結した場合には、建設業法の違反に該当する場合があります。
建設業法令遵守ガイドラインの解説は、17週にわたって行ってまいりましたが今回で終了となります。
次回からは「監理技術者制度運用マニュアル」を取り上げて解説します。
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行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。