引き続き、全国の建設業許可申請の手引きを見ていきたいと思います。
弊社の本社は愛知県にあり、お客様も同じ愛知県周辺エリアに集中しています。そのため手にする、目にする手引きというものが愛知県や中部地方整備局の手引きに偏ります。このブログを読んでいただいている方は全国にいらっしゃいますので、「私自身が全国的な視点を持とう」と思い、全国の手引きを見ています。
建設業許可の要件等は建設業法関連法令に規定されているため、全国を見ても違いはありませんが、要件確認資料の種類や要件や専門用語の説明の仕方等に違いがありますので、取り上げるのはそのような点になります。いろいろな手引きを見ることは、より建設業許可や建設業法のより深い理解への参考になると思いますのでご紹介させていただきます。
今回は埼玉県知事許可の手引きを見ていきます。
1.経営業務の管理責任者の確認事項
経営業務の管理責任者(以下、「経管」という。)は、過去の経験と現在の地位等を証明する必要があり、それらを証明するためにいくつかの確認資料を準備しなければならないという話はこのブログで何度もしております。埼玉県では、過去の工事実績経験に関する確認資料が独特であったため少し紹介したいと思います。
工事実績を証明する書類としては、一般的に工事の請負契約書原本になると思います。ただ、建設業許可を取得する前は、建設業法のルールを知らないという業者も多く、請負契約書をちゃんと交わしていない、契約書の原本が残っていないというケースもありますよね。(念のため確認ですが、メールやFAX等で契約を交わした場合の契約書は原本ではありません。原則として、朱肉での押印がある書面が原本となります。)そのような場合、注文書や請求書等でも実績を確認する資料として使用できるという扱いをしている許可行政庁が多いと思います。(プラスαの確認資料提出が必要だとは思いますが。)
埼玉県は、確認資料に関して少し厳しいルールが設けられています。専門工事については、注文書や請求書等でも認められますが、一式工事については請負契約書原本が無ければ工事実績(経験)として認めないと明記されています。一式工事とは、総合的な企画・指導・調整を要する工事です。そのような行為があるかどうかを確認するためには契約書の原本が必要とのことです。一式工事の経験を使って証明する場合には確認資料が準備できるか、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
埼玉県の手引きには、過去役員等であった期間が常勤かどうかを確認するような書類は求められていません。資料を求められていないため確認は無いと思いますが、念のために過去も常勤であることの必要性を確認していただくと良いと思います。
2.専任技術者の確認事項
専任技術者は資格保有者だけでなく、一定の実務経験を有する者でもなることができます。資格保有者であれば資格証等が確認資料になりますが、実務経験の場合の確認資料は許可行政庁によって異なります。
埼玉県の場合、実務経験者には実務経験を証明した者の下で勤務していたことを確認する書類を求めています。(ただし、申請者自身が証明者となる場合は不要です。)役員であれば、登記によって在籍が確認できるため謄本を求めています。それ以外の従業員の場合は、厚生年金非保険者記録照会回答票等により在籍していたことを確認します。加えて、実務経験そのものの確認資料も必要なので、準備が必要な書類が多くなるということです


行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。高度な法的知識、行政との綿密な調整が求められる一般的に難易度の高いと言われる許認可申請の対応を得意としている。建設業者からの信頼も厚く、建設業者の顧問や、建設業者の社内研修も多数対応している。