引き続き、全国の建設業許可申請の手引きを見ていきたいと思います。
弊社の本社は愛知県にあり、お客様も同じ愛知県周辺エリアに集中しています。そのため手にする、目にする手引きというものが愛知県や中部地方整備局の手引きに偏ります。このブログを読んでいただいている方は全国にいらっしゃいますので、「私自身が全国的な視点を持とう」と思い、全国の手引きを見ています。
建設業許可の要件等は建設業法関連法令に規定されているため、全国を見ても違いはありませんが、要件確認資料の種類や要件や専門用語の説明の仕方等に違いがありますので、取り上げるのはそのような点になります。いろいろな手引きを見ることは、より建設業許可や建設業法のより深い理解への参考になると思いますのでご紹介させていただきます。
今回も引き続き、千葉県知事許可の手引きのうち「建設業許可に関するよくある質問」からピックアップして見ていきます。
1.経営経験に関する事項
建設業を営んでいた(経営)経験は、非常勤役員の経験の場合、許可行政庁によって判断が異なることを何度か取り上げてきました。
千葉県においては、非常勤の役員であっても経営業務の管理責任者の経験として認められる、と明記してあります。愛知県では常勤の役員経験しか認められないので、非常勤でも認められることはとても羨ましいです。
2.「常勤性」とは
建設業許可事務ガイドラインにおいては、「常勤」を以下のとおり定義しています。
原則として本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事(テレワークを行う場合を含む。)していること。
そのため、(常勤性を証明したい)会社での職務従事の時間等が十分でなければ常勤と認められない、ということになります。千葉県では他社の代表取締役を兼ねている場合には、原則として常勤性を認めていません。例外的に、①(代表を務める会社に)複数の代表取締役がいること、かつ、②非常勤証明書の発行があれば、申請する会社での常勤性を認めています。
つまり、代表取締役が1名しかいない会社の代表取締役と申請会社の役員を兼務している場合は、①を満たさないため、申請会社では常勤性が認められないことになります。
代表者を兼務している方を経営業務の管理責任者にする場合には、職歴等を事前確認する必要がありそうです。
3.報酬と常勤性の関係
役員の常勤性の確認は、一般的に事業所名の記載がある健康保険被保険者証によって確認されるため、役員報酬の「額」については特に気にしたことはありませんでした。(最低限、社会保険の支払ができる金額であること、と質問に対し回答をしたことはありますが、その程度です。)
千葉県では、「200万円」というのがボーダーラインのようです。
申請会社の役員報酬が200万円未満であっても、所得証明により他に給与所得や営業所得が無い、という事であれば申請会社での常勤性が認められます。他に給与を得ていない、という事は、つまり働いていないということになります。そうなれば、低い給与(報酬)であっても、その会社で所定の時間中その職務に従事している(働いている)からこそ支払われているお金という解釈ができ、常勤性を認めることができるということです。
ちなみに、年金、農業、不動産など他の所得があっても、これらの所得に関しては、原則として常勤性を阻害するものではないという扱いになっています。
「常勤性」の扱いは許可行政庁によって、少しずつ異なる部分があるので注意が必要です。


行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。