引き続き、全国の建設業許可申請の手引きを見ていきたいと思います。
弊社の本社は愛知県にあり、お客様も同じ愛知県周辺エリアに集中しています。そのため手にする、目にする手引きというものが愛知県や中部地方整備局の手引きに偏ります。このブログを読んでいただいている方は全国にいらっしゃいますので、「私自身が全国的な視点を持とう」と思い、全国の手引きを見ています。
建設業許可の要件等は建設業法関連法令に規定されているため、全国を見ても違いはありませんが、要件確認資料の種類や要件や専門用語の説明の仕方等に違いがありますので、取り上げるのはそのような点になります。いろいろな手引きを見ることは、より建設業許可や建設業法のより深い理解への参考になると思いますのでご紹介させていただきます。
今回も引き続き神奈川県知事の手引きをみていきます。
1.申請書等の提出・受付方法と注意点
コロナの影響で、全国的に窓口での直接提出・受付だけでなく、郵送での提出等が行われていたと思います。収束した今でも、引き続き郵送提出を認めているところが多いのではないでしょうか。神奈川県も引き続き郵送提出を継続しており、現在認められてる申請方法が3パターンあります。
①窓口での対面提出・受付
②郵送による提出・受付
③窓口での申請書類預かりによる提出・受付
①と③は直接窓口まで行き提出することになるため、「提出日=受付日」となります。
しかし②の場合、郵送日(提出日)=受付日とはなりません。郵送の場合、配送のため窓口への到達には数日を要するためです。郵送提出で注意すべきは、この配送に要する日数です。新規申請では特に問題ありませんが、更新申請の場合、申請が許可期限ギリギリになってしまったときには、郵送トラブル等により許可期限内に窓口へ到達しないリスクもあるため、①又は③の方法、窓口まで行き、その場で提出・受付を済ませる方が安心です。
2.会社の事業目的
法人の場合、定款の写しの提出が必要な都道府県が多いと思います。常に最新のものを求められます。ところで、定款の写しを提出する目的は何だと思いますか。これはあくまでも私の予想ですが、目的は2つあると思っています。
1つ目は会社の事業目的を確認すること、そして2つ目が役員の任期を確認することです。
会社の事業目的は、定款だけでなく登記事項証明書に記載されています。会社の目的を変更・追加するためには株主総会を開いた後、変更登記手続きをすることで変更・追加されます。我々の地元の愛知県では、事業目的の整合が取れているかという事のみの確認になりますが、神奈川県は少し異なります。
原則として、事業目的に許可を受けようとする建設工事を営む文言が無ければなりません。もし記載が無い場合には、「今後定款を変更して事業目的に追加する」という念書の添付が必要になります。
事業目的として記載されていることが要件、と言えるかもしれません。神奈川県で申請をする際には、自社の事業目的を確認して建設業許可の申請を行う必要がありそうです。
3.役員の任期と重任登記
定款の写しを申請時に添付する理由2つ目は、役員の任期を確認することではないかとお伝えしました。取締役の任期は、会社法において2年と定められています。ただし、非公開会社の場合、定款によって任期を最長10年とすることができます。つまり、定款を確認しなければ取締役の任期が分からないということです。
そして、任期を確認したら、次に確認していただきたいのは「重任登記」がされているか、という点です。「重任」とは、取締役等が任期満了後、次の任期も取締役等に就任することです。重任したことが登記事項証明書で確認できるようにするために行うものが「重任登記」です。
特に任期を延長している場合や家族経営の会社では、重任登記を忘れていることがあります。登記を忘れること(「登記懈怠(けたい)」といいます。)は会社法違反となり、過料の対象になります。建設業の申請では違反を解消して申請を行うようにするため、必ず重任登記等を含め正しく登記されていることを確認していると思います。(愛知県では、登記懈怠状態が無くなるまで(正しく登記されるまで)は、申請等を受付けてくれません。)
建設業の手続きで登記が必要だったと気付く場合を私は何度か目にしています。登記懈怠にならないよう、事業年度ごとに確認をすると良いかもしれません。


行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。高度な法的知識、行政との綿密な調整が求められる一般的に難易度の高いと言われる許認可申請の対応を得意としている。建設業者からの信頼も厚く、建設業者の顧問や、建設業者の社内研修も多数対応している。