引き続き、全国の建設業許可申請の手引きを見ていきたいと思います。
弊社の本社は愛知県にあり、お客様も同じ愛知県周辺エリアに集中しています。そのため手にする、目にする手引きというものが愛知県や中部地方整備局の手引きに偏ります。このブログを読んでいただいている方は全国にいらっしゃいますので、「私自身が全国的な視点を持とう」と思い、全国の手引きを見ています。
建設業許可の要件等は建設業法関連法令に規定されているため、全国を見ても違いはありませんが、要件確認資料の種類や要件や専門用語の説明の仕方等に違いがありますので、取り上げるのはそのような点になります。いろいろな手引きを見ることは、より建設業許可や建設業法のより深い理解への参考になると思いますのでご紹介させていただきます。
今回からは山梨県の手引きです。
1.「建設業」とは
改めて、「建設業」の定義を見ておきたいと思います。
「建設業」とは、元請・下請その他いかなる名称をもってするかを問わず、建設工事の完成を請負う営業をいいます。ポイントとなるのが、「建設工事の完成を請負う」という点です。
民法第632条において「請負」とは、仕事の完成を目的とする契約のことをいいます。つまり、建売住宅の販売(これは、売買契約に該当。)や労働力の提供(これは、労働契約や派遣契約等に該当。)を目的とした契約は請負契約には該当せず、建設業に該当することがないということになります。人工出しや単価契約は請負契約に該当せず、その契約をもとに行った営業は建設業に該当しないということです。
一方、伐採や剪定などの委託業務は「請負」に該当しますが、土木建築に関する工事の完成を目的とはしていないため建設業には該当しません。
建設業に該当するかどうかは、名称だけで判断するのではなく、契約書の内容や作業内容を確認して判断する必要があります。
2.附帯工事とは
「附帯工事」については、これまでに何度も取り上げていますが、改めて定義を見ておきます。
附帯工事とは、主たる建設工事の施工により必要に応じた他の従たる建設工事、または、主たる建設工事を施工するために必要を生じた他の従たる建設工事のことです。つまり、附帯工事で施工するものは独立の使用目的に供されるものではありません。
附帯工事は、軽微な建設工事と同様に、建設業許可が無くても請負うことができます。そのため、附帯工事に該当するかどうか適切に判断する必要があります。
判断の方法としては、建設工事の注文者の利便性、建設工事の請負契約の慣行等が基準になります。つまり建設工事の準備・実施・仕上にあたり、一連または一体の工事として施工することが必要である、もしくは相当であると認められるかを総合的に検討し判断する必要があります。何でもかんでも、附帯工事として判断をすることのないようにしましょう。
3.一式工事と附帯工事を伴う専門工事
規模が大きい修繕工事等を請負った場合、みなさんはどの業種に該当すると判断するでしょうか。
一般的には一式工事と判断するケースが多いと思いますが、中には、専門工事に該当するのではないかと判断に迷うケースもあります。
ここで、山梨県の判断基準を紹介しておきます。
一式工事に該当するのか、附帯工事を伴う専門工事に該当するのか、判断に迷う場合は以下の点を考慮してみましょう。
①請負った建設工事の主たる目的は何か?
あくまでも、自社が請負った建設工事の範囲で「主」となる工事を判断します。
②請負った工事が、総合的な企画・指導・調整が必要な工事か
総合的な企画・指導・調整が必要な工事は一式工事に該当します。そして、一式工事は規模が大きな工事になりますので、専門工事をいくつも組み合わせた工事であっても規模が小さい場合には一式工事には該当しません。(専門工事のいずれかに該当します。)


行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。