引き続き、全国の建設業許可申請の手引きを見ていきたいと思います。
弊社の本社は愛知県にあり、お客様も同じ愛知県周辺エリアに集中しています。そのため手にする、目にする手引きというものが愛知県や中部地方整備局の手引きに偏ります。このブログを読んでいただいている方は全国にいらっしゃいますので、「私自身が全国的な視点を持とう」と思い、全国の手引きを見ています。
建設業許可の要件等は建設業法関連法令に規定されているため、全国を見ても違いはありませんが、要件確認資料の種類や要件や専門用語の説明の仕方等に違いがありますので、取り上げるのはそのような点になります。いろいろな手引きを見ることは、より建設業許可や建設業法のより深い理解への参考になると思いますのでご紹介させていただきます。
今回で山梨県の手引きは最後です。
1.建設工事を「受注」するときの留意事項
建設業許可を取得し、建設業を営むにあたり注意すべき点が手引きにまとめられています。まず、工事を受注する際のルールを見ておきます。
①書面による契約(建設業法第19条)
②契約の内容(建設業法18条)と工事請負契約約款
③注文者の義務(建設業法第19条の3~5、第20条、第20条の2)
④受注者の義務(建設業法第12条、第20条、第21条、第22条)
⑤経営事項審査(第27条の23)
特に①書面による契約の内容は確認しておきましょう。
民法上は口約束でも契約が成立しますが、建設業法では口約束は認められていません。必ず書面で行うようにしてください。(例外として、電子契約は認められています。)
また、最近ご相談が多い事項は「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(以下、「建設リサイクル法」といいます。)に関してです。解体工事の施工が、一定規模・一定の金額に該当する場合のみ建設リサイクル法は適用されます。工事の内容は建設リサイクル法第9条第1項に定められています。
特定建設資材を用いた建築物等に係る解体工事又はその施工に特定建設資材を使用する新築工事等であって、その規模が第三項又は第四項の建設工事の規模に関する基準以上のもの(以下「対象建設工事」という。)の受注者(当該対象建設工事の全部又は一部について下請契約が締結されている場合における各下請負人を含む。以下「対象建設工事受注者」という。)又はこれを請負契約によらないで自ら施工する者(以下単に「自主施工者」という。)は、正当な理由がある場合を除き、分別解体等をしなければならない。
対象工事を施工する場合には、工事の請負契約書に以下の事項も記載が必要になります。
・分別解体等の方法
・解体工事に要する費用
・再資源化等をする施設の名称及び所在地
・再資源化等に要する費用
建設リサイクル法のように、建設業法に関連する法律による規定も遵守が必要です。
2.建設工事を「施工」するときの留意事項
工事を受注すると、次は実際に工事が動き出すことになります。施工するにあたり注意すべき点が2つありますが、いずれも重要な事項になります。
①施工体制台帳及び施工体系図の作成(建設業法第24条の8)
②工事現場への技術者の配置(建設業法第26条)
②の技術者の配置では、適正な技術者の配置がされていないケースが多く、処分が科されているケースを多々見かけます。(処分にはならなかったものの違反をしている業者が多い。)
主任技術者・監理技術者の区別だけでなく、専任配置が必要な工事の有無等もあわせて確認しておくことをおすすめします。
3.その他の留意事項
他法令との関連で、浄化槽工事・解体工事・電気工事については注意が必要です。
特に、解体工事と電気工事は許可を保有している業者も多いので、解体工事業と電気工事業について触れておきます。
解体工事は平成28年6月の建設業法改正でとび・土工コンクリート工事から独立した業種です。これはまだ記憶に新しいでしょうか。この改正以降は、解体工事業の許可が無ければ解体工事を請負うことはできなくなりました。(経過措置期間は除く。)
また、解体工事については、軽微な建設工事しか請け負わない場合でも、「登録」を受けなければ工事を請負うことはできません。先ほども見た建設リサイクル法に基づき、登録が義務とされています。
もう一つは電気工事です。
電気工事業法に基づく「届出」が必要です。そして電気工事業法に基づく届出は、電気工事業の許可を保有しているか否かに関わらず手続きが必要になります。電気工事を施工する建設業者は、電気工事業法の手続きも忘れず行うようにしましょう。


行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。高度な法的知識、行政との綿密な調整が求められる一般的に難易度の高いと言われる許認可申請の対応を得意としている。建設業者からの信頼も厚く、建設業者の顧問や、建設業者の社内研修も多数対応している。