引き続き、全国の建設業許可申請の手引きを見ていきたいと思います。
弊社の本社は愛知県にあり、お客様も同じ愛知県周辺エリアに集中しています。そのため手にする、目にする手引きというものが愛知県や中部地方整備局の手引きに偏ります。このブログを読んでいただいている方は全国にいらっしゃいますので、「私自身が全国的な視点を持とう」と思い、全国の手引きを見ています。
建設業許可の要件等は建設業法関連法令に規定されているため、全国を見ても違いはありませんが、要件確認資料の種類や要件や専門用語の説明の仕方等に違いがありますので、取り上げるのはそのような点になります。いろいろな手引きを見ることは、より建設業許可や建設業法のより深い理解への参考になると思いますのでご紹介させていただきます。
今回も長野県の手引きを見ていきます。
1.建設業許可の運用解釈
長野県の手引きでは「建設業許可の運用解釈」としてよくある質問をQ&Aとしてまとめています。メインは「許可」に関することになるため、建設業を実際に営む上での疑問等には直接触れていませんが、許可を維持していくため、また建設業を営む者の知識としては重要だと判断しました。
内容は以下のとおりです。
1.建設業許可の必要性について
2.建設工事について
3.「営業所」の解釈と許可行政庁について
4.法人の組織変更等(合併を含む)について
5.常勤役員等(経営業務の管理責任者等)や常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者について
6.技術者について
7.財産的基礎又は金銭的信用について
8.令3条使用人について
9.財務諸表について
10.許可の更新について
とても多くのQ&Aが取り上げられているため、その中からよくある質問やぜひ覚えておいてもらいたい解釈等を、いくつかピックアップしてご紹介いたします。
2.建設工事に該当するか
「1.建設業許可の必要性について」の中から、次のQを取り上げます。
Q 無線を自動車等に設置する場合も、工事として取り扱うのか。
答えは、建設工事には該当しないため、工事として取り扱いません。
無線の設置工事は電気通信工事に該当しそうですが、問題はそもそもこの作業が建設工事に該当するのか、という点です。
建設工事とは、建築物、建築設備、その他土地に定着する工作物に係る作業をいいます。そのため、今回のケースのように土地に定着しない自動車への設備設置は建設工事に該当しません。船に関する内装工事や設備設置工事も同様の考え方です。
建設工事の該非を判断することは大変重要ですので、非該当となる事例を覚えておくことも判断の役に立ちます。
2.業種判断(一式工事について)
一式工事については度々解説をしていますが、具体例を用いながら改めて一式工事の解釈を確認してみましょう。
一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物又は建築物を建設する工事です。2つ以上の専門工事を組み合わせて行う工事や、専門工事を複数組み合わせていなくとも、工事の規模・複雑性等から見たときに専門工事としては施工困難な工事が一式工事に該当します。代表的な工事の例を挙げておきます。
<土木一式工事の例示>
橋梁、ダム、空港、トンネル、高速道路、鉄道軌道、区画整理、道路の造成、公道下の下水道等の工事を一式として請け負うもの
※ただし・・・
土地の造成のうち、個人住宅程度の規模の場合はとび・土工・コンクリート工事に該当する<建築一式工事の例示>
建築確認を必要とする住宅の新築・増改築、ビル等の建設
他にも、業種判断に関するQ&Aがいくつも取り上げられています。(建設工事の該非判断にも活用できるものもあります。)一度目を通し、業種判断をする際の考え方・方法の参考にしていただくと良いと思います。


行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。高度な法的知識、行政との綿密な調整が求められる一般的に難易度の高いと言われる許認可申請の対応を得意としている。建設業者からの信頼も厚く、建設業者の顧問や、建設業者の社内研修も多数対応している。