今回は、建設業許可の要件の一つであるお金の要件を取り上げます。一般建設業許可と特定建設業許可では、それぞれ要件が異なりますので、建設業法第7条第4号と第15条第3号とを整理して覚えましょう。
1.一般建設業許可の場合
一般建設業許可で求められる要件は、次の①、②又は③のいずれかに該当することです。
① 自己資本の額が500万円以上であること
② 500万円以上の資金を調達する能力を有すると認められること
③ 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること
①の「自己資本」とは、法人の場合、貸借対照表における純資産合計の額になります。個人事業主の場合は期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額をいいます。(実際に決算書等で確認をしてみてください。)
②を証明するためには、取引金融機関の融資証明書や預金残高証明書等を準備することになります。
2.特定建設業許可の場合
特定建設業許可の要件は、次の①から③すべてを満たすことが必要です。
① 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
② 流動比率が75%以上であること
③ 資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること
①の「欠損の額」とは、法人の場合、貸借対照表の繰越利益剰余金がマイナスのとき、その額が資本剰余金、利益準備金及び任意積立金の合計額を上回る額をいいます。個人事業主の場合は事業主損失が事業主借勘定から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額を上回る額をいいます。
②の「流動比率」とは、流動資産を流動負債で割って得た数値を百分率(%)で表したものをいいます。
③の「資本金」とは、法人の場合、株式会社の払込資本金をいいます。個人事業主の場合は、期首資本金をいいます。また、「自己資本」とは、法人の場合、貸借対照表における純資産合計の額をいいます。個人事業主の場合は、期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額をいいます。
これらの要件は、決算書等を見ながら確認いただくと分かりやすいと思います。
3.財産的要件等の判断基準
上記の基準を満たしているかどうかの判断がどのタイミングで行われるのか、これは重要ですので覚えておいてください。
原則として、既存の法人の場合、申請時の直前の決算期における財務諸表により行われます。新規設立の法人の場合は創業時における財務諸表により行います。
ただし、例外的に当該財務諸表上では資本金の額に関する基準を満たさない場合でも、申請日までに増資を行うことによって基準を満たすこととなるときには、「資本金」についてはこの基準を満たしているものとして取り扱います。※特定建設業許可の要件の一つ
また、これらの基準に適合するか否かは当該許可を行う際に判断されるものです。そのため、基準を満たしたうえで申請をして許可を受けた後にこの基準を適合しないこととなっても、直ちに当該許可の効力に影響を及ぼすものではありません。つまり財産的要件を満たさなくなったと同時に許可が無くなるということはありません。次回行う申請のタイミングで、再度これらの基準について判断が行われることになります。
<財産的基礎の要件>


行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。高度な法的知識、行政との綿密な調整が求められる一般的に難易度の高いと言われる許認可申請の対応を得意としている。建設業者からの信頼も厚く、建設業者の顧問や、建設業者の社内研修も多数対応している。