建設業者に関係する建設業法等の法令に関する情報を紹介

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東京・八王子 アパート階段崩れ落ち事故における建設会社の責任は?

4月17日に東京・八王子市のアパートで階段の一部が崩れ落ち、50代の女性が転落するという事故が起こりました。女性は意識不明の重体となり、病院で手当てを受けていましたが22日に死亡。警察は容疑を業務上過失致死に切り替えて捜査をしている状況です。

ニュースによりますと、鉄製の階段と廊下などとの接続部分に使われていた木材の一部が腐食していたことが崩れ落ちた原因のようですが、アパートを設計した建築士事務所によると、設計段階では接続部分にも鉄を使用することになっており、木材の使用は想定されていなかったようで、「事故が起きて初めて木材が使われていることを知った」という説明をしているそうです。

仮に、建築士事務所の説明が事実だとすれば、工事を担当した建設会社が鉄を使用せずに木材を使用して建築したことになります。この場合、建設会社は何か処分を受けることになるのでしょうか?検討してみたいと思います。

建築基準法違反のおそれ

建築工事は一般的に次の流れで進んでいくこととなります。建築基準法のルールとして、建築着工の前には建築確認申請を行わなければなりません。


(出典:国土交通省「建築関係法の概要」https://www.mlit.go.jp/common/000134703.pdf

今回の死亡事故のケースでは、建築士事務所は2012年に設計図を検査機関に提出をしているそうなので、建築確認申請は適正に行われていたのではないかと思います。

仮に、建設会社が設計図書に従わずに工事を施工してしまっていた場合は建築基準法違反となります。最も重たい罰則に該当するとなれば、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられることとなります。なお、法人に対しては1億円以下の罰金が科せられます。

また、建築確認済証交付後に計画の変更が生じた場合は自治体や検査機関に対して、変更の手続きをしなければなりませんが、おそらくその手続きがなされていなかったと考えられますので、その点に関しても、建築基準法違反になると考えられます。

建設業法違反のおそれ

国土交通省の「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001366874.pdf)によれば次のような監督処分が行われる可能性があります。

  • 公衆危害
    建設業者が建設工事を適切に施工しなかったために、公衆に死亡者又は3人以上の負傷者を生じさせたことにより、その役職員が業務上過失致死傷罪等の刑に処せられた場合で、公衆に重大な危害を及ぼしたと認められる場合は、7日以上の営業停止処分を行うこととする。それ以外の場合であって、危害の程度が軽微であると認められるときにおいては、指示処分を行うこととする。
  • 祖雑工事等による重大な瑕疵
    施工段階での手抜きや粗雑工事を行ったことにより、工事目的物に重大な瑕疵が生じたときは、7日以上の営業停止処分を行うこととする。
  • 建築基準法違反等
    役員等又は政令で定める使用人が懲役刑に処せられた場合は7日以上、それ以外の場合で役職員が刑に処せられたときは3日以上の営業停止処分を行うこととする。
    建築基準法の違反が建設資材に起因するものであると認められるときは、必要に応じ、指示処分を行うこととする。

また、建築基準法違反で、刑罰に処せられた場合、建設業許可の欠格要件に該当し、許可が取消しとなる可能性もあります。

影響は他にも

建築基準法や建設業法などのコンプライアンス違反は、罰則(懲役刑、罰金刑)や行政による監督処分(営業停止処分、許可取消処分)を受けるだけでなく、ニュースによる報道などにより、コンプライアンス違反を起こした会社として認識され、企業イメージ・ブランド力・社会的信用などの失墜につながってしまいます。業界内での評判も落ち、消費者にもマイナスイメージを与えることとなってしまいます。

そのようなことが起きないようにするため、不正やコンプライアンス違反が起きにくい環境を作っていくことが大切です。行動をチェックできるような仕組みや、社内の相談窓口、コンプライアンスマニュアルの整備等は効果があります。このような取り組みをすることにより、コンプライアンス違反がないように気を付けましょう。

行政書士法人名南経営は、建設業許可手続きだけでなく、スポットでの相談対応、従業員・協力会社向けの建設業法令研修や、模擬立入検査、コンプライアンス体制構築コンサルティングまで対応しております。MicrosoftTeamsを利用したWEB面談も可能です。お気軽にご相談ください。

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