国土交通省は、工期設定等の実態について調査を行う「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」を実施し、令和4年6月15日にその結果を公表しました。この調査は建設業の働き方改革を推進するにあたって、特に民間工事における取組を強化していく目的で実施されたものです。
以下、国土交通省「「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」の結果を公表」(https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo13_hh_000001_00113.html)から抜粋してご紹介します。
調査の概要
(1)調査対象
<建設企業>建設業法第27条の37の規定に基づく届出団体(111団体)の各団体会員企業
<発注者>電気・鉄道・住宅・不動産業界の大手企業42社
(2)調査時点
令和4年1月1日現在(令和2年9月以降に請け負った工事)
(3)調査項目
主に民間工事について、工期設定にあたっての受発注者間の協議の有無/工期の適正性/工期変更の理由/工期変更に伴い増加した工事費の負担/休日の取得状況/働き方改革・生産性向上に向けた取組など
(4)回答企業数
<建設企業>1,933社(うち、有効回答企業数1,471社)
<発注者>42社(すべて有効回答)
主な調査結果
- 注文者から提案された工期について、「妥当な工期の工事が多かった」と回答した建設企業は 66.6%であったものの、「短い工期の工事が多かった」は 29.2%、「著しく短い工期の工事が多かった」は 1.6%であった。一方で、平均的な休日の取得状況については、「4週6休程度」が 44.1%で最も多く、「4週8休以上」は8.6%にとどまった。
- 発注者の属性別にみると、個別工事の工期設定について「(著しく)短い工期の工事だった」と回答した建設企業の割合は、小売(44.3%)・不動産業(38.4%)・学校教育(38.1%)などが全体平均(26%)よりも高かった。また、実際に取得できた休日については、「4 週 8 休以上」と回答した割合は、小売(4.3%)・不動産業
(4.6%)・医療・福祉(5.3%)・住宅メーカー(5.6%)などで全体平均(11.0%)を下回った。(数値は工期変更がなかった工事の値) - 請負階層別にみると、「(著しく)短い工期の工事が多かった」と回答した建設企業の割合は、全体では 30.8%であるが、一次下請工事を主とする企業では 36.8%、二次以下の下請工事を主とする企業では 44.9%となっており、請負階層が下がるほど短い工期を要求される傾向にあった。
民間工事全般における工期設定の状況
- 「妥当な工期が多い」は6割超も、「4週8休以上」は1割以下にとどまる
- 請負階層が下がるほど短工期を要求されているケースが多い
- 工期に関する協議も、下請企業は依頼しづらく、また、受け入れられない
- 工期不足には作業員の増員等で対応、特に民間工事では生産性向上の努力も
- 下請企業は、工事条件が不明瞭なまま契約を締結
- 発注者の属性によっても工期設定や休日確保に差
まとめ
令和2年10月の改正建設業法の施行により、著しく短い工期の禁止が明確化されました。また、中央建設業審議会が工期に関する基準を作成し、その実施を勧告しています。しかしながら、下請企業や民間工事を主とする企業では、工期に関する基準の内容が分からなかったり、そもそも知らないという企業が約6~7割もいます。また、適正工期の確保は、建設企業だけでなく、注文者の理解促進が必要不可欠です。引き続き、業界全体で取り組んでいかなければならない課題だと思います。
工期に関する基準はこちらからご確認ください。
»【工期に関する基準】背景には建設業界の問題点


行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修はもちろんのこと、建設業者の安全協力会や、各地の行政書士会からも依頼を受け、建設業法に関する研修を行っている。