国土交通省では、工期設定等の実態について調査を行う「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査(令和4年度)」を実施し、令和5年5月31日にその結果を公表しました。
「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」とは?
平成30年に成立した「働き方改革関連法」による改正労働基準法に基づいて、建設業においても、令和6年度から時間外労働の罰則付き上限規制が適用されます。また、令和元年6月に品確法と建設業法・入契法を一体的に改正する「新・担い手3法」が成立し、「著しく短い工期による請負契約の禁止」が新たに規定され、令和2年7月には中央建設業審議会において「工期に関する基準」が作成・勧告されました。これらを受けて、国土交通省では、建設業の働き方改革の実現に向けて、取組を強化していくこととしています。取組の1つとして実施されているものが「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」で、この調査は国土交通省において今後の施策を検討するために実施される工期設定等の実態調査となっています。
調査概要
1.調査対象
<建設企業>
建設業法第27条の37の規定に基づく届出団体(116団体)の各団体会員企業
<発注者>
工事発注実績のある電気・鉄道・住宅・不動産業界の大手企業42社
2.調査時点
令和5年1月19日現在(令和4年1月以降に請け負った工事)
3.調査項目
<建設企業>
主に民間発注工事について、工期の設定状況/工期設定にあたっての受発注者間の協議の有無や状況/工期の適正性/条件明示の状況/工期変更の有無や理由/残業時間の状況/「工期に関する基準」等の認知状況/働き方改革・生産性向上に向けた取組状況/資材価格等の高騰への対応状況など
<発注者>
民間発注工事について、工期の設定状況/工期設定で重視する項目/条件明示の状況/工期変更の有無や理由/「工期に関する基準」等の認知状況/適正な工期設定のために必要なこと/資材価格等の高騰への対応状況など
4.回答企業数
<建設企業>
2,182社(うち、R4年1月以降、民間工事の受注実績のある企業1,693社)
<発注者>
42社
調査結果
建設企業の調査結果
- 注文者から提示される工期は建設企業において、「妥当な工期」と認識している場合が多いが、「4週8閉所」は少ない
- 最終的な工期設定において、注文者等の意向に従うことが多い
- 短い工期に対応するため、「休日出勤」や「早出・残業」等で対応している
- 技術者・技能者とも、月当たり最大残業時間が 100 時間超も見られる
- 工期変更できない理由として「供用開始日の制約があるため」が多い
- 工期変更は元請企業(上位下請企業)から提案される場合が多い
- 工期変更の要因として「資機材の調達難航」や「関連工事との調整」が多い
- 「注文者の理解」を必要と考えている意見が多い
- 中小建設企業や下請企業では生産性向上や経営効率化の取組が遅れている
- 変更契約協議の申し出がなされているが、契約変更に至らない場合も多い
発注者の調査結果
- 工期設定方法は事業分野によって異なり、分野によっては受注者との協議がない
- 発注者は「予算」や「供用開始時期」を重視し、工期設定を行っている
- 工期変更に関する申し出の理由としては「資機材の調達難航」が最も多い
- 現状、適正な工期設定に向けて改善できているとは言い難い
- 適正な工期設定のためには受発注者間の協議、発注者側の理解が必要である
- 資材価格等の高騰を受けて、契約変更が行われていないケースがある
より詳細な調査結果はこちらからご確認いただけます。
<建設企業>https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001612256.pdf
<発注者>https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001612257.pdf


行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修はもちろんのこと、建設業者の安全協力会や、各地の行政書士会からも依頼を受け、建設業法に関する研修を行っている。