令和2年10月の建設業法の改正に伴い「監理技術者制度運用マニュアル」も改正されました。改正された部分はもちろんのこと本マニュアルの内容を解説し、建設業法令遵守にお役立ていただきたいと思います。
工事現場の技術者とは
建設業法第26条では、工事現場に、工事の内容に合致した所定の資格や経験を有する技術者を設置しなければならないと規定しています。
主任技術者及び監理技術者の設置等
第二十六条 建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。
2 発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者(当該建設工事に係る建設業が指定建設業である場合にあつては、同号イに該当する者又は同号ハの規定により国土交通大臣が同号イに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者)で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。
(以下、省略)
工事現場へ配置する技術者は、「主任技術者」または「監理技術者」と規定されています。
原則として、技術者の現場配置を省略することはできません。(例外として、主任技術者を省略できるケースがありますが、ここでは説明を省略します。参考条文:建設業法第26条の3)
主任技術者と監理技術者の違いですが、監理技術者を置かなければならないケースをしっかり覚えておいてください。監理技術者は、①元請として工事を請け負い、②税込4,000万円(建築一式工事の場合は税込6,000万円)以上を下請契約して施工する場合、現場に配置する技術者です。つまり、下請として現場に入る場合には、例え1億円の工事を請け負っていても監理技術者を配置する必要はありません。主任技術者は、監理技術者の配置が必要な工事以外の工事に配置する技術者となります。
※監理技術者と主任技術者の違い
中部地方整備局「建設業法に基づく適正な施工の確保に向けて(令和2年10月改訂)より引用
さらに、令和2年10月の建設業法改正によって、現場に配置する技術者に「特例監理技術者」と「監理技術者補佐」が追加されました。
技術者に関する建設業法改正ポイント
監理技術者に関して、令和2年10月の建設業法改正で「特例監理技術者」と「監理技術者補佐」が規定されました。技術検定の改正とも関連のある部分ですので、しっかりと覚えておいてください。
建設業法第26条第3項
3 (省略)監理技術者にあつては、発注者から直接当該建設工事を請け負つた特定建設業者が、当該監理技術者の行うべき第二十六条の四第一項に規定する職務を補佐する者として、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者に準ずる者として政令で定める者を当該工事現場に専任で置くときは、この限りでない。
そもそも監理技術者には、1級の資格もしくは大規模な工事において指導監督的な立場での経験(経験は指定建設業7業種では認められないので注意してください。)が必要です。監理技術者は主任技術者よりも、高度な技術力が求められています。そのため、これらの資格・経験を有する方が限られており、建設業者が人材確保に苦労していました。そして人材不足の解消のために新たに規定されたのが「特例監理技術者」と「監理技術者補佐」です。
簡単に説明します。「特例監理技術者」は、監理技術者と必要な資格・経験は同じです。違いは、他の工事と兼務することができるという点です。(詳細については、後日取り上げて解説します。)「監理技術者補佐」とは字のごとく、監理技術者を補佐する技術者です。監理技術者になることができる資格・経験があれば当然、監理技術者補佐になることはできますが、さらに1級の第1次検定合格者である「1級技士補」も監理技術者補佐になることができます。(技術検定に関する詳細についても、後日解説します。)
本日のまとめ
建設業法では、「建設工事の適正な施工の確保」という大きな目的があります。そのために、建設工事現場には、技術力を有する監理技術者等を現場に配置するよう規定しています。
そして、規模の大きい工事を元請として請け負う建設業者には、より高度な技術力と下請業者等の管理を含めた施工ができるようマネジメント力が必要で、監理技術者の設置を規定しています。
今回は、それぞれの技術者の違いを理解していただければと思います。
行政書士法人名南経営は、建設業許可手続きだけでなく、スポットでの相談対応、従業員・協力会社向けの建設業法令研修や、模擬立入検査、コンプライアンス体制構築コンサルティングまで対応しております。MicrosoftTeamsを利用したWEB面談も可能です。お気軽にご相談ください。

行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。高度な法的知識、行政との綿密な調整が求められる一般的に難易度の高いと言われる許認可申請の対応を得意としている。建設業者からの信頼も厚く、建設業者の顧問や、建設業者の社内研修も多数対応している。