令和2年10月の建設業法の改正に伴い「監理技術者制度運用マニュアル」も改正されました。改正された部分はもちろんのこと本マニュアルの内容を解説し、建設業法令遵守にお役立ていただきたいと思います。
1.下請契約の範囲と予定額(工事外注計画)
発注者から直接建設工事を請け負った建設業者が、まず行うことは工事外注計画を立案することです。計画立案には、以下の2点を検討します。
①工事のどの部分を下請業者へ発注するのか(専門工事業者への分担)
②下請契約の請負金額がどの程度となるか
なぜ、計画立案が必要なのでしょうか。
理由は、工事現場に配置する技術者を判断するためです。前回のブログでも取り上げましたが、工事現場には主任技術者または監理技術者を、原則として配置しなければなりません。2つの技術者の違いは、下請契約の金額によって異なることは前回学びました。つまり、下請契約の金額によって配置する技術者が異なり、特に監理技術者が必要となれば一定の資格が必要となるため、配置する人材を確保しておかなければなりません。
※前回のブログ→【監理技術者制度運用マニュアル】監理技術者って何?
適正な技術者の配置をするために、まず計画立案を行うこととなります。計画立案は、受注後、速やかに行うようにしましょう。そして、当然すべて計画通りに工事が進むとは限りません。工事の進捗段階に応じて見直しを行うことも忘れないでください。
2.下請契約に関する注意点
「下請契約」は建設業法において次のように定められています。
建設業法第2条第4項
4 この法律において「下請契約」とは、建設工事を他の者から請け負つた建設業を営む者と他の建設業を営む者との間で当該建設工事の全部又は一部について締結される請負契約をいう。
そして、下請契約で注意すべきことは2つあります。
①「請負契約」とは
②一括下請負契約について
①「請負契約」とは、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約する契約」のことをいいます。注意していただきたいのは、契約書では請負契約として締結をしていても実態として「偽装請負」となっていないかという点です。「偽装請負」とは、労働者派遣に該当するケースです。つまり、発注者である元請業者が、受注者である下請業者の従業員に対して指揮命令をして施工させる行為は偽装請負に該当する可能性があります。(元請業者と下請業者の従業員には雇用関係が無いため。)
2019年には、大手ゼネコンが偽装請負として労働局から是正指導を受けたというニュースがあったことをご存じの方もいると思います。偽装請負とならないようにするためにも、現場の管理技術者等への教育指導も必要です。
②「一括下請負」とは、俗にいう工事の丸投げです。元請業者が受注した工事を下請業者へすべて発注しお願いする、という行為です。建設業法では一括下請負を原則禁止しています。
建設業法第22条第1項
建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。
一括下請負については、公共工事においては例外なく禁止されています。また、民間工事においても原則禁止とし、例外的に発注者の書面の承諾があれば一括下請負を認めています。ただし、民間工事においても、共同住宅(長屋を除く)を新築する工事は一括下請負を禁止しています。
発注者が信頼してお願いした建設業者(元請業者)なのに、実際はその建設業者は工事を施工しないとすれば、それは建設業法の目的の1つである「発注者保護」に反する行為となります。そのため、建設業法では一括下請負を禁止しています。
3.本日のまとめ
発注者から工事を受注した後にすべきことは、受注した工事現場に配置する技術者を選定するための準備です。具体的には、工事外注計画の立案であって下請業者への役割分担をし、下請契約の請負金額を把握することです。適正な技術者配置ができるように、工事外注計画は必ず行うようにしてください。
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行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。高度な法的知識、行政との綿密な調整が求められる一般的に難易度の高いと言われる許認可申請の対応を得意としている。建設業者からの信頼も厚く、建設業者の顧問や、建設業者の社内研修も多数対応している。