令和2年10月の建設業法の改正に伴い「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準(監督処分基準)」が改正されました。改正された部分はもちろんのこと、この基準の内容を解説し、建設業法令遵守にお役立ていただきたいと思います。
本日は、監督処分の基準の具体的な考え方について取り上げます。具体的な考え方については、細かく分類されていますので、複数回に分けて解説します。
1.請負契約に関する不誠実な行為があった場合
「請負契約に関する」とは、契約の締結だけのことを指している訳ではありません。入札、契約の締結・履行、契約不適合責任の履行など、建設工事の請負契約に関する全ての過程を指しています。この過程において処分対象となる4つのパターンを見ていきます。
①虚偽申請
公共工事の請負契約に係る一般競争及び指名競争において、競争参加資格確認申請書や競争参加資格確認資料など、入札前の調査資料に「虚偽」の記載をしたときや、その他公共工事の入札及び契約手続について「不正行為等」を行った場合、15日以上の営業停止処分が行われます。
また、完成工事高の水増しなどの「虚偽」の申請を行うことにより得た経営事項審査結果を公共工事の発注者に提出し、公共発注者がその結果を資格審査に用いた場合、30日以上の営業停止処分が行われます。
②主任技術者等の不設置等
建設業法第26条では、原則としてすべての工事現場に主任技術者等を配置することを義務付けています。その規定に違反して主任技術者等を置かなかったときは、15日以上の営業停止処分が行われます。また、「置かなかった」とは、資格要件を満たさない者を置いた場合も含みます。
第二十六条 建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。
2 発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者(当該建設工事に係る建設業が指定建設業である場合にあつては、同号イに該当する者又は同号ハの規定により国土交通大臣が同号イに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者)で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。
(以下、省略)
技術検定の受検又は監理技術者資格者証の交付申請において、虚偽の実務経験証明書を作成し不正に資格又は監理技術者資格者証を取得した者を主任技術者又は監理技術者として工事現場に置いた場合には、30日以上の営業停止処分が行われます。この基準は、近頃、大手建設会社で多くの技術者の実務経験の虚偽が発覚し問題になったことを受けて、新たに追加されました。
工事現場に置かれた主任技術者又は監理技術者が、建設業法第26条第3項又は第26条の3第6項第2号に規定する専任義務に違反する場合には、指示処分が行われます。建設業法第26条第3項における専任義務は、元請・下請の立場を問わないという点にご注意ください。
また、この指示処分に従わない場合、7日以上の営業停止処分が行われます。
第二十六条(第一項及び第二項省略)
3 公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。ただし、監理技術者にあつては、発注者から直接当該建設工事を請け負つた特定建設業者が、当該監理技術者の行うべき第二十六条の四第一項に規定する職務を補佐する者として、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者に準ずる者として政令で定める者を当該工事現場に専任で置くときは、この限りでない。
(以下、省略)第二十六条の三(第一項~第五項省略)
6 第一項の元請負人が置く主任技術者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する者でなければならない。
一 当該特定専門工事と同一の種類の建設工事に関し一年以上指導監督的な実務の経験を有すること。
二 当該特定専門工事の工事現場に専任で置かれること。
(以下、省略)
③祖雑工事等による重大な瑕疵
施工段階で手抜きや粗雑工事を行ったことにより、重大な瑕疵が生じたときは、15日以上の営業停止処分が行われます。
④施工体制台帳等の不作成
建設業法第24条の8において、施工体制台帳等の作成義務が規定されています。施工体制台帳等の作成義務があるにもかかわらず作成を怠ったときや、虚偽の施工体制台帳等の作成を行ったときは、7日以上の営業停止処分が行われます。
第二十四条の八 特定建設業者は、発注者から直接建設工事を請け負つた場合において、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が政令で定める金額以上になるときは、建設工事の適正な施工を確保するため、国土交通省令で定めるところにより、当該建設工事について、下請負人の商号又は名称、当該下請負人に係る建設工事の内容及び工期その他の国土交通省令で定める事項を記載した施工体制台帳を作成し、工事現場ごとに備え置かなければならない。
2 前項の建設工事の下請負人は、その請け負つた建設工事を他の建設業を営む者に請け負わせたときは、国土交通省令で定めるところにより、同項の特定建設業者に対して、当該他の建設業を営む者の商号又は名称、当該者の請け負つた建設工事の内容及び工期その他の国土交通省令で定める事項を通知しなければならない。
3 第一項の特定建設業者は、同項の発注者から請求があつたときは、同項の規定により備え置かれた施工体制台帳を、その発注者の閲覧に供しなければならない。
4 第一項の特定建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、当該建設工事における各下請負人の施工の分担関係を表示した施工体系図を作成し、これを当該工事現場の見やすい場所に掲げなければならない。
2.まとめ
実は、私たちが模擬立入検査を実施した際、一番違反が多いのはこの請負契約に関する事項です。建設業法のルールをしっかりと理解していないと、気付かないところで違反行為をしていることになります。今一度、自社の体制等を確認してみてください。
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行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業者向けの研修や行政の立入検査への対応、建設業者のM&Aに伴う建設業法・建設業許可デューデリジェンスなど、建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としている。