令和2年10月の建設業法の改正に伴い「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準(監督処分基準)」が改正されました。改正された部分はもちろんのこと、この基準の内容を解説し、建設業法令遵守にお役立ていただきたいと思います。
本日は、監督処分の基準の具体的な考え方について取り上げます。具体的な考え方については、細かく分類されていますので、複数回に分けて解説します。今回は、建設業法以外の法令違反に基づく処分事例を取り上げます。
目次
1.労働安全衛生法違反等の場合
労働安全衛生法違反とは具体的に、工事関係者が事故を起こした場合等です。事故が起きその結果、役職員が労働安全衛生法違反により刑に処せられた場合には、指示処分が行われます。ただし、工事関係者に死亡者又は3人以上の負傷者を生じさせたことにより業務上過失致死傷罪等の刑に処せられ、かつ、特に重大な事故を生じさせたと認められる場合には、3日以上の営業停止処分を行われます。
2.建築基準法違反等の場合
建築基準法違反によって役員等又は政令で定める使用人が懲役刑に処せられた場合には、7日以上の、それ以外の場合で役職員が刑に処せられたときは3日以上の営業停止処分が行われます。
また、建築基準法第9条に基づく措置命令等建設業法施行令第3条の2第1号等に規定する命令を受けた場合(違反建築物に対する特定行政庁または建築監視員の命令等)には指示処分が行われます。そしてこの命令に違反した場合には、3日以上の営業停止処分が行われます。
さらに、建築基準法の違反が建設資材に起因するものであると認められる場合には、必要に応じて、指示処分が行われます。
3.廃棄物処理法違反や労働基準法違反等の場合
役員等又は政令で定める使用人が懲役刑に処せられた場合にはは7日以上の、それ以外の場合で役職員が刑に処せられた場合には3日以上の営業停止処分が行われます。
4.特定商取引に関する法律違反の場合
特定商取引に関する法律とは、訪問販売、通信販売、連鎖販売取引等、消費者トラブルを生じやすい特定の取引形態を対象として、消費者保護と健全な市場形成の観点から、特定商取引法を活用し、取引の適正化を図っています。「クーリング・オフ」の制度はこの法律によるものです。
この法律違反により役員等又は政令で定める使用人が懲役刑に処せられた場合には7日以上の、それ以外の場合で役職員が刑に処せられた場合には3日以上の営業停止処分が行われます。
また、特定商取引に関する法律第7条等に規定する指示処分(訪問販売における違反行為等による指示処分)を受けた場合には、建設業法においても指示処分が行われます。さらに、同法第8条第1項等に規定する業務等の停止命令(指示処分に従わない等による停止命令)を受けた場合には、3日以上の営業停止処分が行われます。
5.賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律違反の場合
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律とは、新たにサブリース業者と賃貸住宅所有者との間の賃貸借契約の適正化のための規制措置を講ずるとともに、賃貸住宅管理業を営む者に係る登録制度を設けることで、「管理業務の適正な運営」と「借主と貸主の利益保護」を図るための法律です。令和2年6月に施工された新しい法律です。
この法律違反により役員等又は政令で定める使用人が懲役刑に処せられた場合には7日以上の、それ以外の場合で役職員が刑に処せられた場合には3日以上の営業停止処分が行われます。
また、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律第33条第2項に規定する指示処分を受けた場合(特定賃貸借契約の適正化のための措置に関する規定に違反し指示処分を受けた場合)には、指示処分が行われます。さらに同法第34条第2項の規定により、特定賃貸借契約の締結について勧誘を行うことを停止すべき命令を受けた場合は、3日以上の営業停止処分が行われます。
6.法人税法、消費税法等の租税違反の場合
脱税等の違反行為によって役員等又は政令で定める使用人が懲役刑に処せられた場合には7日以上の、それ以外の場合で役職員が刑に処せられた場合には3日以上の営業停止処分が行われます。
7.暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反(第32条の3第7項の規定を除く。)等の場合
役員等又は政令で定める使用人が刑に処せられた場合には、7日以上の営業停止処分が行われます。
8.健康保険法違反、厚生年金保険法違反、雇用保険法違反の場合
役員等又は政令で定める使用人が懲役刑に処せられた場合には7日以上、それ以外の場合で役職員が刑に処せられた場合には3日以上の営業停止処分が行われます。
また、健康保険、厚生年金保険又は雇用保険に未加入、かつ、保険担当部局による立入検査を正当な理由がなく複数回拒否する等、再三の加入指導等に従わず引き続き健康保険等に未加入の状態を継続し、健康保険法、厚生年金保険法又は雇用保険法に違反していることが保険担当部局からの通知により確認された場合には、指示処分を行が行われます。さらに、指示処分に従わない場合には、営業停止処分が行われることもあります。この場合、営業停止の期間は、3日以上となっています。
9.まとめ
2.~5.の法律違反は建設工事の施工等に関する法律違反です。6.及び7.は、建設業者の信用失墜行為に該当します。
建設業法以外の法令遵守にも取り組むようにしましょう。
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行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。高度な法的知識、行政との綿密な調整が求められる一般的に難易度の高いと言われる許認可申請の対応を得意としている。建設業者からの信頼も厚く、建設業者の顧問や、建設業者の社内研修も多数対応している。