「経営業務の管理責任者」や「専任技術者」は常勤性が求められていますが、「令3条使用人」にも常勤性が求められているのでしょうか?
「建設業法のツボとコツがゼッタイにわかる本[第2版]」(秀和システム)の「第1章 建設業法始める前に」から「18 営業所長や支店長などの令3条使用人は、常勤でなければならないの?」の内容を参考に解説したいと思います。
令3条使用人とは?
令3条使用人とは、「建設業法施行令第3条に規定する使用人」といいます。建設業法施行令に次のとおり定められています。
▼建設業法施行令
(使用人)
第三条 法第六条第一項第四号(法第十七条において準用する場合を含む。)、法第七条第三号、法第八条第四号、第十二号及び第十三号(これらの規定を法第十七条において準用する場合を含む。)、法第二十八条第一項第三号並びに法第二十九条の四の政令で定める使用人は、支配人及び支店又は第一条に規定する営業所の代表者(支配人である者を除く。)であるものとする。
具体的には営業所長や支店長など、建設業を営む営業所の代表者が令3条使用人に該当します。令3条使用人は営業所の代表者であるため、その営業所における建設工事の見積、入札、請負契約の締結等をする権限が与えられていないければなりません。このような権限が与えられている人が令3条使用人に該当するのであって、役職は副営業所長や副支店長であっても問題ありません。また、令3条使用人は役員であることは求められていません。
常勤性は必要か?
建設業法には、令3条使用人が常勤でなけれなならないとは定められていません。しかしながら、建設業許可事務ガイドラインでは、次のとおり「原則として、当該営業所において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事していることが求められる。」と定められており、実質的に常勤性が求められている状態です。
▼建設業許可事務ガイドライン
【第5条及び第6条関係】
2.許可申請書類の審査要領について
~中略~
(12)建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表(様式第十一号)について
「建設業法施行令第3条に規定する使用人」とは、建設工事の請負契約の締結及びその履行に当たって、一定の権限を有すると判断される者、すなわち支配人及び支店又は営業所(主たる営業所を除く。)の代表者である者が該当する。これらの者は、当該営業所において締結される請負契約について総合的に管理することや、原則として、当該営業所において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事(テレワーク(営業所等の勤務を要する場所以外の場所で、ICTの活用により、営業所等で職務に従事している場合と同等の職務を遂行でき、かつ、当該所定の時間中において常時連絡を取ることが可能な環境下においてその職務に従事することをいう。以下同じ。)を行う場合を含む。)していることが求められる。
なお、この表は、これらの者のうち役員を兼ねている者についても記載させるものとする。
~以下省略~
出典:国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001581332.pdf)
そのため、建設業法においては常勤でなければならないとの定めはないものの、非常勤で令3条使用人になることは難しいと思います。
令和2年4月からの書類の簡素化
国土交通省は、令和2年4月1日、建設業許可に関する申請書類を大幅に簡素化しました。これに伴い、令3条使用人に関しても提出不要となった書類がありました。令3条使用人に関して、現在不要となっている書類は次の表のとおりです。
【大臣許可において提出不要となった令3条使用人の確認資料】
・現住所確認のための住民票等
・健康保険証の写し
・権限確認のための辞令もしくは委任状
「経営業務の管理責任者」や「専任技術者」の常勤性を証明するための確認資料として、健康保険証の写しが求められます。令3条使用人は、常勤性の確認資料である健康保険証の写しが不要になりましたが、上述のとおり、建設業許可事務ガイドラインにおいては、常勤性が求められているような記載があるため、非常勤の方では難しいと考えます。


行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修はもちろんのこと、建設業者の安全協力会や、各地の行政書士会からも依頼を受け、建設業法に関する研修を行っている。