建設業許可は取得したら終わりではありません。
経営業務の管理責任者や専任技術者などの建設業許可の要件を満たし続ける必要がありますし、5年に1度の建設業許可の更新申請手続きや、役員が変わったときなどの変更届の手続きなどを漏れなく行わなければなりません。
行政書士法人名南経営に対してご相談いただく事例として「経営業務の管理責任者が亡くなってしまい、後任者がいない」「専任技術者が退職してしまい、後任者がいない」「更新手続きを失念してしまった」などがあります。これらの相談事例はいずれも建設業許可を失効(廃業)することになる事例です。具体的には以下のいずれかに該当すると建設業許可の廃業となります。
①建設業者である個人事業主が死亡したとき
②会社合併により建設業者である会社が消滅したとき
③建設業者である会社が破産手続き開始の決定により解散したとき
④②③以外の理由により建設業者である会社が解散したとき
⑤建設業許可の要件を満たさなくなったとき
⑥建設業許可の更新手続きを行わなかったとき
⑦許可を受けた建設業を廃止したとき
今回は、建設業許可の更新手続きを行わなかったケースで建設業許可を失効した場合の対応について解説いたします。
目次
更新手続きを忘れて、建設業許可を失効したらどうすればよいか?
1.廃業届は必要ない
上記の①~⑤、⑦に該当した場合は、建設業法第12条の規定により、廃業届の提出が必要となります。この届出を怠ると罰則の対象になるため注意が必要です。⑥の「建設業許可の更新手続きを行わなかったとき」に該当する場合は建設業許可の期限の満了により許可が失効するため、廃業届を提出する必要ありません。
(廃業等の届出)
第十二条 許可に係る建設業者が次の各号のいずれかに該当することとなつた場合においては、当該各号に掲げる者は、三十日以内に、国土交通大臣又は都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
一 許可に係る建設業者が死亡したとき(第十七条の三第一項に規定する相続人が同項の認可の申請をしなかつたときに限る。)は、その相続人
二 法人が合併により消滅したとき(当該消滅までに、合併後存続し、又は合併により設立される法人について第十七条の二第二項の認可がされなかつたときに限る。)は、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)であつた者
三 法人が破産手続開始の決定により解散したときは、その破産管財人
四 法人が合併又は破産手続開始の決定以外の事由により解散したときは、その清算人
五 許可を受けた建設業を廃止したとき(第十七条の二第一項又は第三項の認可を受けたときを除く。)は、当該許可に係る建設業者であつた個人又は当該許可に係る建設業者であつた法人の役員
2.注文者へ通知する
建設業法第29条の3の規定により、建設業許可の更新手続きを行わなかったことにより許可が失効した場合は、許可が失効してから2週間以内にその旨を建設工事の注文者に通知しなければならないとされています。元請であれば発注者に対して、一次下請であれば元請に対して、二次下請であれば一次下請に対して通知をすることとなります。
(許可の取消し等の場合における建設工事の措置)
第二十九条の三 第三条第三項の規定により建設業の許可がその効力を失つた場合にあつては当該許可に係る建設業者であつた者又はその一般承継人は、第二十八条第三項若しくは第五項の規定により営業の停止を命ぜられた場合又は前二条の規定により建設業の許可を取り消された場合にあつては当該処分を受けた者又はその一般承継人は、許可がその効力を失う前又は当該処分を受ける前に締結された請負契約に係る建設工事に限り施工することができる。この場合において、これらの者は、許可がその効力を失つた後又は当該処分を受けた後、二週間以内に、その旨を当該建設工事の注文者に通知しなければならない。
(以下省略)
建設業許可の失効前に受注した工事はどうすればよいか?
建設業許可の更新手続きを行わなかった場合、建設工事の請負契約を締結したときには有効な建設業許可を保有していたものの施工時には無許可の状態になっている、ということがあり得ます。そのようなケースでは、建設業許可の執行前に請負契約を締結した建設工事に限り施工することが認められています。建設業許可の失効後は、無許可の状態であるため、新たな建設工事の請負契約を締結することはできません。
(許可の取消し等の場合における建設工事の措置)
第二十九条の三 第三条第三項の規定により建設業の許可がその効力を失つた場合にあつては当該許可に係る建設業者であつた者又はその一般承継人は、第二十八条第三項若しくは第五項の規定により営業の停止を命ぜられた場合又は前二条の規定により建設業の許可を取り消された場合にあつては当該処分を受けた者又はその一般承継人は、許可がその効力を失う前又は当該処分を受ける前に締結された請負契約に係る建設工事に限り施工することができる。この場合において、これらの者は、許可がその効力を失つた後又は当該処分を受けた後、二週間以内に、その旨を当該建設工事の注文者に通知しなければならない。
(以下省略)
注文者は建設工事の請負契約を解除することができる。
建設業許可を失効した建設業者は、注文者に対して通知をする必要があると解説しましたが、通知を受け取った注文者としては「許可がない建設業者には任せたくない」と考えるかもしれません。そのような場合、注文者は通知を受けた日又は建設業許可が効力を失ったことを知った日から30日以内であれば、締結済みの建設工事の請負契約を解除することができるとされています。
(許可の取消し等の場合における建設工事の措置)
第二十九条の三 第三条第三項の規定により建設業の許可がその効力を失つた場合にあつては当該許可に係る建設業者であつた者又はその一般承継人は、第二十八条第三項若しくは第五項の規定により営業の停止を命ぜられた場合又は前二条の規定により建設業の許可を取り消された場合にあつては当該処分を受けた者又はその一般承継人は、許可がその効力を失う前又は当該処分を受ける前に締結された請負契約に係る建設工事に限り施工することができる。この場合において、これらの者は、許可がその効力を失つた後又は当該処分を受けた後、二週間以内に、その旨を当該建設工事の注文者に通知しなければならない。
(中略)
5 建設工事の注文者は、第一項の規定により通知を受けた日又は同項に規定する許可がその効力を失つたこと、若しくは処分があつたことを知つた日から三十日以内に限り、その建設工事の請負契約を解除することができる。
建設業許可の手続き漏れに注意
建設業許可の手続きを内製化されている建設業者様では、1人の担当者の方が手続きを担当していることが多く、担当者の異動や退職、担当者による失念などで、手続きを漏らしてしまうというケースが起こりやすいです。担当者1人任せにしないことや、建設業許可の期限の管理をすることが大事です。
行政書士法人名南経営では、建設業許可の手続きを内製化されている建設業者様向けに、顧問契約による建設業許可期限の管理サービスも提供しております。自社のみで管理するということに不安をお感じの方がいらっしゃればぜひ当社のサービスの活用をご検討ください。


行政書士法人名南経営(愛知県名古屋市)の所属行政書士。建設業許可担当。建設業者のコンプライアンス指導・支援業務を得意としており、建設業者の社内研修はもちろんのこと、建設業者の安全協力会や、各地の行政書士会からも依頼を受け、建設業法に関する研修を行っている。