建設業者に関係する建設業法等の法令に関する情報を紹介

  1. 相談事例
  2. 567 view

【相談事例】会社合併に伴う許認可の承継

年度末ということもあり、4月1日付での会社合併に伴う許認可の承継手続きを多くご依頼いただいております。

建設業許可をはじめとする許認可は、事業をするためになければならないものなので、合併においても重要です。合併で許認可は自動的に承継されるものではなく、承継するためには事前又は事後の手続きが必要となります。しかしながら、合併は検討事項や手続きも多いこともあり、許認可のことは見落とされがちです。実際に合併した後に「許認可が無くなるなんて思ってなかった・・・、何とかなりませんか?」というご相談をいただいたりもします。

そのようなことが無いように、今回は会社合併に伴う許認可の承継について、大事なポイントをお伝えします。

保有している許認可の洗出し

合併の話が持ち上がってきたら、まず合併する当事会社のすべてについて、保有している許認可を洗い出してください。洗出しの方法は概ね次の方法になるかと思います。

①保管されている許可証や認可書等を確認する
②本社や営業所に掲示されている標識や看板を確認する
③保管されている許認可の申請書類や届出書類を確認する

保有している許認可が分からなければ、承継手続きをすることができませんので、ここが一番大事な手順といっても過言ではありません。「この許認可を持っている」とはっきり分からなくても、何か手掛かりになるものがあれば、それを基に官公庁へ問い合わせることで許認可の確認をすることができます。建設業許可や宅地建物取引業免許等の場合は、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」(https://etsuran.mlit.go.jp/TAKKEN/kensetuKensaku.do)で検索をすることもできます。

例えば、このように存続会社と消滅会社の保有許認可を洗い出します。

存続会社 消滅会社
建設業許可(大臣許可) 特定18業種
宅地建物取引業免許(大臣免許)
建築士事務所登録(4カ所)
建設業許可(知事許可) 特定11業種
宅地建物取引業免許(知事免許)
建築士事務所登録(1カ所)

承継するための手続きの確認

保有している許認可を洗い出せたら、次は合併で存続する会社に許認可を承継する手続きを確認します。手続きの確認で大事な点は、「空白期間なく承継する方法を確認する」ということです。空白期間とは許認可がなく営業ができない期間のことです。そうなると多大な損失が発生してしまいますので、空白期間なく承継する方法を確認することが大事です。また、許認可によっては承継手続きが法律で定められていないものもありますし、承継手続きも許認可によってバラバラなので、しっかりと確認してください。

承継手続きが法律で定められている場合は、承継手続きは概ね次の3パターンに分かれます。保有している許認可の承継手続きがどれに該当するか確認してください。

①事前の認可等の申請
②事前の届出
③事後の届出

建設業許可・宅地建物取引業免許・建築士事務所登録の承継手続きついて整理すると下表のとおりとなります。

許認可 許認可承継の可否
(法律に承継手続きが定められているか)
通常必要な手続き
※許認可の内容や合併のスキームによって変わります。
建設業許可 存続会社・消滅会社の連名で事前の認可申請
宅地建物取引業免許 × 承継することはできませんので、消滅会社の廃業届を提出し、存続会社が(免許を持っていない場合は)合併後に新規申請をする必要があります。
建築士事務所登録 × 承継することはできませんので、消滅会社の廃業届を提出し、存続会社が合併後に新規申請をする必要があります。

宅地建物取引業免許と建築士事務所登録は、新規申請をしてから免許が下りたり、登録が完了するまで一定期間必要となります。そのため、上表のケースで通常通りに手続きを進めると、宅地建物取引業や建築士事務所の事業においては、消滅会社が消滅したタイミングから許認可がない状態(空白期間)となってしまいます。そうならないようにするためには、早めに管轄の官公庁へ相談に行き、空白期間が出来ないように進める方法について打合せをする必要があります。

承継するために必要な手続きを確認できたら、あとは粛々と進めていくだけです。会社合併の場合は、合併の日が決まっています。その日以降は許認可を保有している状態にしなければならないため、許認可の取得が1日でも遅れてしまってはいけません。提出の締日が決まっている手続きもあります。手続きのスケジュールを確認したうえで、申請や届出が遅れないように注意してください。

許認可維持に必要な要件のチェック

最後の手順としては要件のチェックです。そもそも許認可を維持するためには、許認可の要件を満たしていなければなりません。合併に伴い、存続会社の役員を総入替えしたり、合併に伴って従業員が退職したり、ということもあり得ると思いますが、ヒトに関する要件は満たせなくなってしまうケースが多いです。合併後に、許認可を維持する要件を維持し続けることができるかどうかはチェックしておいてください。

建設業許可・宅地建物取引業免許・建築士事務所登録の注意すべき要件は下表のとおりとなります。

許認可 注意すべき要件
建設業許可
  • 経営業務の管理責任者
  • 専任技術者
宅地建物取引業免許
  • 専任の宅地建物取引士
建築士事務所登録
  • 管理建築士

まとめ

ここまで会社合併に伴う許認可の承継のポイントについてお伝えしました。改めてご確認ください。

    1. 保有している許認可の洗出し
    2. 承継するための手続きの確認
    3. 許認可維持に必要な要件のチェック

会社合併の話が持ち上がってきた際は、許認可のことも頭に入れ、これら3つのポイントを漏れなく進めるようにしてください。許認可のない空白期間が出来てしまえば、多大な損失を被ることになってしまいますので十分ご注意いただきたいと思います。

行政書士法人名南経営では「建設業許可・建設業法デューデリジェンス」サービスをご用意しております。許認可の承継等に関してご不安のある方はお気軽にお問い合わせください。

»建設業許可・建設業法デューデリジェンス

    建設業者向けの最新情報を月に1回、セミナーのご案内を随時メールマガジンにて無料配信しています。またパンフレットやブログ記事を閲覧するためのパスワードもメルマガでご確認いただけます。配信をご希望の方はフォームにてお申込みください。
     

    個人情報保護方針はこちら

    This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

    相談事例の最近記事

    1. 発注代行業務・支払代行業務には建設業許可は必要か?

    2. 【相談事例】監督員や現場代理人と主任技術者・監理技術者は兼務できるか?

    3. 【相談事例】主任技術者・監理技術者はリモートでその職務を行うことができるか

    4. 「実務経験」と「指導監督的実務経験」の違い

    5. 【相談事例】電気工事業の模擬立入検査

    関連記事

    資料ダウンロード

       
      建設業を営むうえで、必ず守らなければならない建設業法。建設業法違反には、罰則や監督処分といった制裁があり、建設業の経営において多大な影響を与えるリスクがあります。
      そこで、本資料では、建設業法の遵守においてチェックしたいポイントを4つにまとめて解説しました。
      (※お申込み頂いたアドレス宛に、弊社メルマガをお送りいたします。)
       

      個人情報保護方針はこちら

      This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.