建設業者に関係する建設業法等の法令に関する情報を紹介

  1. 用語解説
  2. 263 view

建設業法における監理技術者とは?資格や必要となる工事について解説

監理技術者の配置が必要な工事とは

建設業法第26条では、建設工事を施工する際には、工事現場に工事の内容に合致した所定の資格・経験を有する技術者を配置しなければならないと規定しています。

(主任技術者及び監理技術者の設置等)
第二十六条
建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。
2 発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者(当該建設工事に係る建設業が指定建設業である場合にあつては、同号イに該当する者又は同号ハの規定により国土交通大臣が同号イに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者)で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。
(以下、省略)

このように建設工事の適正な施工を確保するために配置される技術者のことを、主任技術者または監理技術者といいます。

次の2つを満たす工事を施工する場合には、監理技術者の配置が求められます。
 ①発注者から直接請け負っている工事(元請業者の立場で施工する工事)
②下請契約の請負金額の合計が4,500万円(建築一式工事の場合には7,000万円)以上となる工事

また監理技術者の配置が必要な建設工事を請け負う場合には、特定建設業許可が必要となります。

監理技術者と主任技術者の違い

主任技術者とは、請負金額の大小、元請・下請に関わらず、建設工事を施工する時に必ず主任技術者を設置しなければならない技術者をいいます。つまり、監理技術者の配置が必要ない工事では、主任技術者の配置が必要になります。監理技術者を配置しなければならない工事を覚え、それ以外の工事は主任技術者を配置する、と覚えておくと良いでしょう。


出展:関東地方整備局 建設工事の適正な施工を確保するための建設業法 (令和5.1版)

監理技術者となるための要件

建設業法上、監理技術者となるための要件は2つあります。
 ①必要な資格、実務経験を有していること
②建設業者との間に、直接的かつ恒常的な雇用関係があること

この2つ以外に監理技術者に求められている要件はなく、これらの要件をクリアした技術者であれば監理技術者になることができます。

監理技術者になるために必要な資格とは

建設業法の目的である建設工事の適正な施工を確保するため、監理技術者となるためには、下表右側の資格・実務経験を有していることが求められます。
■主任技術者・監理技術者に求められる資格

※指定建設業とは
 土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業の7業種

こちらを見ていただくと、監理技術者となるために求められる資格は、指定建設業7業種と、それ以外の22業種で異なることが分かります。指定建設業7業種において監理技術者となるためには、必ず一級の国家資格が必要になります。

監理技術者になるために必要な雇用条件とは

建設業法の目的である建設工事の適正な施工を確保するため、監理技術者には所属する建設業者との間に、直接的かつ恒常的な雇用関係にあることが求められます。

■直接的な雇用関係とは
監理技術者とその所属建設業者との間に第三者の介入する余地のない雇用に関する一定の権利義務関係(賃金・労働時間・雇用・権利構成)が存在することをいいます。
在籍出向者や派遣社員については、建設業者との間に直接的な雇用関係があるとは言えないため、監理技術者になることはできません。

直接的な雇用関係については、健康保険被保険者証や市区町村が作成する住民税特別徴収額決定通知書によって、建設業者との直接的な雇用関係を確認できることが必要です。
参考:国土交通省 建設業許可事務ガイドライン(令和4年12月28日国不建第463号)

■恒常的な雇用関係とは
一定の期間にわたりその建設業者に勤務し、日々一定時間以上職務に従事することが担保されていることをいいます。
公共工事においては、建設業者から入札の申し込みがあった日(指名競争に付する場合であって入札の申し込みを伴わないものにあたっては入札の執行日、随意契約による場合にあたっては見積書の提出のあった日)以前に3か月以上の雇用関係があることが必要とされています。民間工事においても同程度と考えておくと良いでしょう。
そのため、一定期間のみの短期労働者は、建設業者との間で恒常的な雇用関係があるとはいえないため、監理技術者になることはできません。

恒常的な雇用関係については、監理技術者資格者証の交付年月日若しくは変更履歴又は健康保険被保険者証の交付年月日等により確認できることが必要です。
なお、雇用期間が限定されている継続雇用制度(再雇用制度、勤務延長制度)の適用を受けている者は、その雇用期間に関わらず恒常的な雇用関係があるものをしてみなされます。
参考:国土交通省 建設業許可事務ガイドライン(令和4年12月28日国不建第463号)

監理技術者の職務

建設業法第26条の4第1項において、監理技術者等が行わななければならない職務を規定しています。

(主任技術者及び監理技術者の職務等)
第二十六条の四
主任技術者及び監理技術者は、工事現場における建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督の職務を誠実に行わなければならない。

具体的な職務は以下の表のとおりです。
■主任技術者・監理技術者の職務

出典:国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」(令和4年12月23日国不建第457号)
こちらを見ていただくとわかる通り、元請の監理技術者等は「請け負った建設工事全体の統括的施工管理」が求められています。一方、下請の主任技術者は「請け負った範囲の建設工事の施工管理」が求められています。業務として管理すべき範囲が、建設工事全体であるか、自身が請け負った範囲であるか、という点が元請の監理技術者等と下請の主任技術者の職務で大きく違うところでしょう。
また元請の監理技術者等は、その職務として建設工事全体の管理が求められているため、「下請の作成した施工要領書等の確認」「下請間の工程調整」「下請からの施工報告の確認」等の下請業者の管理が職務として含まれているのも大きな特徴です。

このような監理技術者の職務は、業務内容及び業務環境に応じてテレワークにより行うことも認められています。

主任技術者から監理技術者へ変更する場合

工事の契約・打ち合わせの段階で、監理技術者の配置が必要な工事であることが判明していれば、工事着工から問題なく監理技術者を配置することができます。しかし、建設工事の着工時点では下請契約の総額が4,500万円以上となるか否かが微妙な場合や、施工中の計画変更により下請契約の総額が増額し4,500万円以上となってしまう場合が多々あります。この場合には、施工当初に配置していた主任技術者に代えて、監理技術者への変更(配置技術者の変更)が必要になります。


出展:関東地方整備局 建設工事の適正な施工を確保するための建設業法 (令和5.1版)

ただし工事施工当初において主任技術者から監理技術者への変更が予め予想される場合には、当初から監理技術者になることのできる資格を持った技術者を主任技術者として配置しなければなりません。建設工事は一品ごとの受注生産であり、天候等の要因で計画通りに施工が進むものではないため、ある程度の流動性を加味し、施工中に技術者の変更が生じないようにすることが大切です。

監理技術者の専任が必要な工事とは

監理技術者が工事現場での専任が求められるのは、次の2つの条件を満たす工事です。
 ①公共性のある施設若しくは工作物、又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する工事
②請負代金の額が4,000万円以上である工事

まとめ

建設業法では、建設工事の適正な施工を確保するため、技術者の現場配置が義務付けられています。その中でも特に規模の大きい工事を元請けとして請け負う建設業者には、より高度な技術力と下請業者の管理を含めた施工ができるマネジメント能力を有した監理技術者の配置が求められています。適切な資格を有し、適切な雇用関係にある技術者を配置できるように自社の対応を確認し、監理技術者としての職務を行えるよう、社内制度を整えていくようにしてください。

     
    建設業を営むうえで、必ず守らなければならない建設業法。建設業法違反には、罰則や監督処分といった制裁があり、建設業の経営において多大な影響を与えるリスクがあります。
    そこで、本資料では、建設業法の遵守においてチェックしたいポイントを4つにまとめて解説しました。
    (※お申込み頂いたアドレス宛に、弊社メルマガをお送りいたします。)
     

    個人情報保護方針はこちら

    This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

    用語解説の最近記事

    1. 建設業法における書類の保存期間とは?

    2. 契約の内容に変更が生じた場合に変更契約は必要なのか?建設業法をもとに解説

    3. 建設業法における下請代金の支払期日とは?

    4. 建設業許可が必要な請負金額とは?建設業法を基に解説

    5. 工事請負契約時に注文請書は必要なのか?建設業法をもとに解説

    関連記事

    資料ダウンロード

       
      建設業を営むうえで、必ず守らなければならない建設業法。建設業法違反には、罰則や監督処分といった制裁があり、建設業の経営において多大な影響を与えるリスクがあります。
      そこで、本資料では、建設業法の遵守においてチェックしたいポイントを4つにまとめて解説しました。
      (※お申込み頂いたアドレス宛に、弊社メルマガをお送りいたします。)
       

      個人情報保護方針はこちら

      This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.